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海外駐在員の光と闇(闇編②:「日本との隔たり」に悩む日々、OKY)目次
海外赴任における「家族」の負担
「海外駐在の光と闇」と題した本シリーズ(全4回:光編、闇編①-③)ですが、今回は完結編。
前回は、海外生活でわたしが抱えていた苦悩の “2つ目” までをお話しました。
- 狭いコミュニティ内の「同調圧力」
- 「日本との隔たり」に悩む日々、OKY
(オマエガ、ココニキテ、ヤッテミロ) - 「家族」の負担
最後の闇はズバリ、「家族」について。
こちらの 「家族」の負担 という言葉には、以下の2つの意味を込めています。
- 「家族」自身が、海外生活で感じる負担
- そんな「家族」との接し方に悩む、駐在員の負担
駐在員同様にその「家族」も、当事者以外にはなかなか理解してもらえない悩みを抱えているのです。
今回は、そんなお話です。
綺羅びやかで、華やかで、自由で羨ましがられる「駐妻」
「駐妻」という言葉をご存知でしょうか?
「駐在妻」の略称で、夫の海外赴任に付き添って海外へと移住した、奥様方に使われる呼称です。
最近は、奥様の海外赴任に付き添う「駐夫」さんも増えてきているようですね。
一般に、この「駐妻」という言葉には、華やかで綺羅びやかなイメージが伴います。
日本では住めないような、豪勢なホテル暮らし。
ホテルにはジムやプールが付いていて、家事全般はメイドさん任せ。
子供を学校へと送り出したあとは、完全な自由時間。
時間を持て余した奥様方は、5つ星ホテルで優雅なランチ。
上記の例は少々極端ではありますが、働かなくて良い、自由な時間がたっぷりある環境は、世間からの羨望の的となることが多いようです。
そうした世間のイメージとは裏腹に、駐妻本人が自身の境遇をどう受け止めるかは、大きく2パターンに別れます。
- 駐妻としての生活を心から楽しみ、謳歌するパターン
- 世間から向けられる羨望の眼差しと現実とのギャップに、苦悩するパターン
わたしの妻は、後者のパターンでした。
「人生の強制リセットボタンを、突然押された感じ」
妻は「駐妻」生活を、こう称していました。
「人生の強制リセットボタンを、突然押された感じ」
この言葉は一時期、駐妻コミュニティの間で流行したフレーズだそうです。
つまり、わたしの妻だけではなく、多くの方が同じように世間のイメージと現実とのギャップに悩まれていたのですね。
赴任前、妻は仕事をしていました。
もし海外に行くことがなければ、妻の社会人としてのキャリアは、その先も地続きで繋がっていたでしょう。
それが夫の海外転勤に帯同すると決断したことで、ブチッと断絶されることになってしまいました。
新しい土地には、縁もゆかりも、知り合いも皆無です。
会社というコミュニティがあるわたしとは、その点が大きく異なります。
子供はいないため、ママ友もできません。
人によっては、自室に籠もりっきりになってしまう方もいるそうです。
新しい環境を楽しまなければ、もったいない!
おっしゃる通りです。
しかし、この道は、彼女が自ら積極的に選び取ったものではありません。
夫と一緒に暮らすため、選ばざるを得なかった選択肢なのです。
何よりも、妻は「働きたい」タイプの人間でした。
「自分は社会から必要とされていない..」
と赴任当初は、始終しょぼくれていました。
「働かなくていいなんて、羨ましい!」
違うのです。
本来、海外でお給料をもらって働くには「就労ビザ」が必要です。
国や会社に寄るところもあるとは思うのですが、一般に駐妻が「就労ビザ」を取得するのは容易ではありません。
我が家も会社に相談してみたものの、「就労ビザを取る場合、家族手当て一切を取りやめなければいけない」と聞き、諦めました。
「働きたいのに、働けないのだ!」
それが妻の本心でした。
そんな思いがあるからこそ一層、自分の境遇に「理不尽さ」を感じてしまっていたのだろうと思います。
「綺羅びやかで、華やかで、自由があって羨ましいという世間の視線が辛い…」
よく妻がこぼしていた言葉です。
自分の苦悩はまるで、「贅沢な取るに足りないものに過ぎない」と突きつけられているように感じてしまったのかもしれません。
とある “ニュース” で、日本人駐在員コミュニティ全体が騒然とする事態に
妻はある意味、自分の「人生」を犠牲にして、わたしに付き添う決断をしてくれました。
海外が得意ではないわたしは、妻なしでは野垂れ死んでいたでしょう。
妻には本当に感謝をしています。
ただ、闇編①に書いたように、そんな妻と会社の板挟みに合い、わたし自身苦悩していたことも事実です。
駐在員にとって、「家族」との距離感や接し方もまた、大きな悩みのタネなのです。
わたしも日々、妻との接し方に悩みながら生活を送っていました。
そんな中で一時期、とある “ニュース” で、駐在員コミュニティ全体が騒然とする事態となりました。
その “ニュース” は、現地の駐妻が、幼子2人を残して、ホテルの自室から飛び降り自殺をした、というものでした。
噂では旦那様の素行が酷かったという話ですが、事実はわかりません。
ただ少なくとも、その奥様は、そして少なからず旦那様も、大いに悩まれ苦悩していたのだろうと思います。本当にお気の毒です。
駐妻がメンタルヘルスを崩された、という話は枚挙にいとまがありません。
幸い妻は元気に帰国することができましたが、本当に幸運なことだと改めて思います。
なんだかんだ言いつつも、持ち前のバイタリティを生かして、はじめてのことに次々と挑戦し、新しいコミュニティをどんどん開拓していった妻は、スゴい!
わたしは持ち合わせていない、行動力。
とても尊敬しています。
単身赴任者も寂しかろう…
「家族」の問題は、駐在員の永遠のテーマかもしれません。いや、駐在員に限った話ではないかもしれないですね。
我が家は妻に帯同してもらいましたが、単身赴任をされていた方も、相応の悩みを抱えられていたのだろうと思います。
お仕事が忙しく、家族帯同を諦めた営業マンの話は「闇編①」で書きました。
また別のある方は、
「日本に帰っても邪険に扱われる。子供が遊びに来てくれるはずだったのに、直前でやっぱり行きたくないとドタキャンをされてしまった…」
とこぼしていました。
単身赴任者も、家族と会えなくて寂しかろうに…
海外駐在の光と闇、完結。
ここまで、「闇編」のボリュームばかりが膨らんでしまいました。
それでも、わたし自身、海外駐在の経験はトータルで見て “プラス” であっただろうと信じています。
少なくとも、海外赴任の前と後では、世界の見方が大きく変わりました。
大変なこともたくさんありますが、間違いなく今後の自分にとって糧となる良い経験をさせていただきました。
妻も駐在中に始めた取り組みの中から、打ち込めるものを見つけ、新たなキャリアをスタートしています。
最後に、海外赴任を夢見る若者へのエールと、海外生活に苦しむ駐在員の安寧を願って、本シリーズを締めくくらせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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