寛解 と 治癒
メンタル疾患は100%まで治らない
『ストレスフリー大全』 樺沢紫苑 著
この言葉を初めて見たとき、私は大きなショックを受けました。精神科医である樺沢先生による著書『ストレスフリー大全』の中の一文です。
樺沢先生は、札幌医科大学医学部を卒業した後、シカゴのイリノイ大学への留学を経て臨床の現場で経験を積まれ、現在は「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンに、執筆活動、Youtubeやメルマガでの啓もう活動でご活躍されています。
自分はもう100%以前の自分には戻れない。。。
この事実を知ったとき、わたしはむなしいような、寂しいような気持になると同時に、なぜか少し救われたようにも感じました。
「100%を目指さなくても良い、目指す必要はないんだよ」
この言葉の後ろ側に樺沢先生のそんな優しさを感じたのかもしれません。
メンタル疾患を「100%治す」ことは大変難しく、
ほぼ症状が消えたとしても、多くの人は発病前と比べて「体力がなくなった」「集中力が続かなくなった」「ストレスに弱くなった」と、精神的に弱くなったと語る患者さんがほとんど[1]
だそうです。
そんな現実を受け止めきれず、治そうとすればするほど治らない。逆に、病気を自分の一部として受け入れる心構えができた患者さんほど良くなっていく。
医学的には、うつ病の場合、症状がなくなり治療をする必要がなくなった状態であっても「寛解(かんかい)」という用語が用いられるそうです。
「寛解」とは、一時的にまたは継続的に症状が軽減~消失すること、わかりやすく言えば「症状が落ち着いて安定した状態」といえます。精神疾患や白血病などの再発の危険のある病気治療に使用される概念[2]
つまり、風邪が治った場合などに使われる「治癒」という状態は異なり、改善はしても再発の可能性が燻り続けることを意味します。
「寛解」の説明は、精神科医である原先生が書かれた記事から引用させていただきました。原先生は、その記事の中で「うつ病は心の風邪」キャンペーンの功罪についてこう述べられています。
曰く、キャンペーンのおかげで、それまでのうつ病に対する偏見や恐怖心が払しょくされた一方で、
- 1年に数回はかかる
- ちょっと気を付けていれば1週間ほどで治る
- あまり重大な後遺症などはない
- 自分なりの治し方がある(いい意味での民間・代価療法)
- わざわざ医者のところにいく必要などない
などの誤解が広まってしまった。[2]
わたし自身も、このキャンペーンによる刷り込みを受けてしまっていたのでしょう。再発のリスクは理解しているつもりでいましたが、「元の状態に戻らない」などとは露ほども思っていませんでした。うつ病治療の最終ゴールと、風邪の「治癒」を知らず知らずのうちに重ね合わせてしまっていたのだと思います。
元の自分に戻る必要はない、新しい自分になればいい
そんな中、樺沢先生、原先生ともに以下の言葉を引用されています。
生真面目で無理を重ねてしまった自分に戻るのでは病気を再発させるだけ。
もっとおおらかで余裕をもってストレスを受け流せる新しい自分になることを目指せばよいのです。
含蓄の深い言葉で非常に感銘を受けました。
元の自分に戻る必要はない。
完璧を求める必要なんてない。
肩の荷が下りたように感じました。
1冊の中のわずか6ページの内容ですが、この言葉に出会えただけで、本を買った意義は十二分にあったように思います。
『ストレスフリー大全』では、精神科医としての臨床経験に基づき、科学的な根拠をベースにして悩みや不安などのストレスを軽減するための方法論が数多く書かれています。
興味のある方はぜひご覧ください。
[1] 『ストレスフリー大全』 樺沢紫苑 著 オススメ度★★★★★[2] PRESIDENT Online うつ病は風邪のように“治る”ものではない 国際医療福祉大学 福岡保険医療学部 精神医学教授 原富英
『ストレスフリー大全』に書かれている最強のメンタル健康法について:
こんにちは
樺沢先生大好きです
電子ですが3冊持っています
高校2年の時ストレスから過敏性大腸症になり、その後の高校生活は暗黒でした
大学へも行けず、本当につらかったです
読むは易し、行うはがたしですが、ストレスフリーになりたいです
bokupapa2さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
わたしは、本書で樺沢先生を初めて知ったのですが、今でも先生のYouTubeを時々拝見しています。
精神科医のお立場から、本当に患者さんのためを思って言ってくれているのだろうなと、勇気をもらいます。
本当に、おつらい高校時代を過ごされたのですね。。。
わたしも程度は軽いものですが、過度なストレスがかかると、ときどき過敏性腸症候群を発症します。
完全にストレスフリーとは、なかなか行かないかもしれないですが、先生の言葉を噛み締めながら、ストレスや自分の体、自分の心と、上手く付き合っていけるようになりたいものですね。
どうぞご自愛ください。